治療の場(相談・サポート) 臨床研究

rTMS研究室

rTMSの効果と安全性

 当センターのニューロモデュレーション研究室(図3)では、平成20年以降rTMS研究を開始して、これまで150名以上の気分障害患者さんにご協力いただき、臨床研究として日本人におけるrTMSの効果と安全性を検証してきました。研究に参加される皆さんは、療養と薬物療法だけでは十分な回復が得られずに、長いこと社会復帰ができていないかたばかりです。そうした方たちの3~4割がrTMSによって十分な改善効果(ハミルトン抑うつ評価尺度のスコアで50%以上の改善または寛解)が得られています。その一方で、rTMSに全く反応しない方たちが3割程度いて、残りの3割程度のかたはある程度は治療効果が得られるが十分ではないという状況です。北米での臨床試験の結果も同様の反応率を示しています(文献1)。当センターでは、高精度のシャム刺激(見せかけの刺激)システムを用いて、いわゆるプラセボデータを蓄積しておりますが、ハミルトン抑うつ評価尺度のスコア変化率は平均すると20%程度でプラセボ効果はさほど高くない結果となっています。抗うつ薬の効かない方たちの3~4割が反応するということは、一定の意義はあると考えられますが、誰もが恩恵を受けるような「夢の治療」でないことはよく知っておく必要があります。
 安全性や忍容性の観点からは、rTMSは大変優れているという実感を持っています。3割程度のかたが、rTMSの刺激痛を経験しますが、これは刺激中に限定した一過性の痛みであり、はじめの3セッション程度で慣れが生じることが多いです。1割程度のかたは、刺激が終わった後にも持続する頭痛を経験します。よく経験する副作用はこれくらいです。ごくまれにけいれんを誘発することが報告されていますが、患者一人あたりの危険率は0.1%未満と言われています(文献1)。
 これまでの臨床試験のメタ分析から言えることは、rTMSは薬の効果が不十分なうつ病患者さんのおよそ3〜4割に対して、抗うつ薬と同等の治療効果を示し、高い安全性と忍容性を示すということです(文献2)。
 rTMSの効果の持続性や再発予防効果については、北米のデータによると、6か月から12か月の間での再発率が1~3割と推定されています(文献3)。rTMSが有効であった場合には、効果の持続性は比較的高いことと、再発した際にもrTMSが有効性を示すことが示されています。

図3
rTMSの効果と安全性 図3

参考文献

  1. George MS, Taylor JJ, Short EB. The expanding evidence base for rTMS treatment of depression. Curr Opin Psychiatry. 2013;26(1):13-8.
  2. Schutter DJ. Antidepressant efficacy of high-frequency transcranial magnetic stimulation over the left dorsolateral prefrontal cortex in double-blind sham-controlled designs: a meta-analysis. Psychol Med. 2009;39(1):65-75.
  3. Perera T, George MS, Grammer G, Janicak PG, Pascual-Leone A, Wirecki TS. The Clinical TMS Society Consensus Review and Treatment Recommendations for TMS Therapy for Major Depressive Disorder. Brain Stimul. 2016;9(3):336-46.

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