統合失調症に対する薬物治療は、一般的な抗精神病薬の薬物療法により症状が改善し、これまでと同様の生活を送れる人もおられます。しかし、その一方で、複数の抗精神病薬を十分な量、十分な期間服用したにもかかわらず、あるいは副作用のために十分な増量ができず、病気の症状ゆえに、長期にわたる入院を余儀なくされたり、家に引きこもって外に出られなかったりの病状が続き、生活に重度の支障をきたしている方々もおり、そのような状態を「治療抵抗性統合失調症」と呼んでいます。
当センターでは、横浜市立大学附属市民総合医療センターの精神医療センターと血液内科等との連携の下に、「治療抵抗性統合失調症」の治療薬であるクロザピンという薬を使用できるよう必要な手続き(CPMS;クロザリル®患者モニタリングサービスへの登録)を行い、平成24年10月から令和3年3月現在までに114名の患者さんにクロザピン治療を実施してきました。
日本では、平成21年に認可され使われ始めてまだ10年余なのですが、以前よりアメリカ・ヨーロッパだけでなく、韓国・中国などアジアの国々を含めた世界97カ国でも広く使用されており、その高い治療効果が評価されています。
クロザピンは、まれではありますが、白血球減少症など重篤な副作用を起こすことがあり、副作用の早期発見や悪化防止のため定期的な採血などの検査を続けることが義務づけられています。使用前に、本当に「治療抵抗性統合失調症」であるのかに関して、これまでの抗精神病薬の使用歴から確認をし、ご本人とご家族に十分な説明を行い、効果や副作用そして治療計画の御理解をいただき、同意が得られた場合に使用をしています。また、治療導入時には原則18週間の入院治療を必要とします。
当センターで治療を受けられている皆さんのなかで、クロザピンを使ってみたい、クロザピン治療に関して詳しい説明を受けたい、とお考えの方は現在の主治医にご相談ください。また他の医療機関で治療を受けられている方は、現在の主治医とご相談いただき、主治医より当センターまで詳細をお問い合わせいただくよう依頼してください。その後主治医からの診療情報提供書(紹介状)ご持参の上、外来受診をしていだだくことになります。
クロザピン治療は、当センターの基本方針にあります「地域との連携を深め、患者さんの社会復帰を支援」する治療法の一つであると考え、地域の医療機関と連携しながら治療を受けられる患者さんを増やしていきたいと考えております。
クロザピン治療の転院相談専門治療