治療の場(入院・外来治療) 専門治療

rTMS療法

rTMS国内導入までの経緯

 平成20年度より当センターでrTMSの臨床研究を始めました。平成20年10月に米国の食品医薬品局(FDA)は薬物治療が十分な効果を示さないうつ病に対してrTMSの使用を承認(510k)しました。それ以降、世界中でうつ病rTMSが承認されるようになり、現在ではアメリカ、カナダ、オーストラリア、イスラエル、ドイツ、韓国などでrTMSがうつ病の治療方法の一つとして承認されて実臨床の中で使用されています。我が国では、平成24年~25年にかけて、厚生労働省における「医療ニーズの高い医療機器等の早期導入に関する検討会」においてデンマーク製と英国製のrTMS装置の早期導入が承認されました。これはいわゆるデバイス・ラグを軽減する厚生労働省の取り組みですが、うつ病rTMSは精神科領域では初めてその対象となりました。その一方で、我が国では大規模なrTMSの自由診療が展開されて、その動向が国内外で注視されました。平成25年7月には、日本精神神経学会のECT検討委員会が、ECT・rTMS等検討委員会に改称され、rTMSの国内導入や適正使用の在り方を学会として検討することとなりました。しかしその後、医薬品医療機器総合機構(PMDA)と企業、学会との交渉が難航しました。難航した主な理由は、GCP省令(治験を適切に実施するための国際的基準)に基づく国内の治験データがないこと、FDAが承認した治験データによるエビデンスが十分に頑健でないこと、でありました。その後、企業主体の話し合いが継続されて、平成26年8月には米国製のrTMS装置の薬事申請がPMDAに受理されました。薬事審査にも多くの時間がかかりましたが、平成29年10月に米国製のrTMS装置の薬事承認がなされました。そして厚生労働省からの委託を受けて、平成30年3月日本精神神経学会がうつ病rTMSの適正使用指針を策定しました。平成31年1月にはイスラエル製のrTMS装置が日本で薬事承認を受けました。平成29年の薬事承認から1年半をかけて、令和元年6月1日より保険(仮)収載されました(米国から遅れること10年)。ようやく国内導入に向けた第一歩を踏み出すことができましたが、rTMS療法が適切に普及して、各自治体の精神科臨床において適切に使用できるようになるためには、さらなる段階が必要となります。厚生労働省より義務付けられた市販後使用成績調査も今後のrTMS療法を考える上で重要な取り組みとなります。rTMS療法という新たな医療技術が市場原理に翻弄されず、患者や家族、そして社会に受け入れられるためには、有効性・安全性の治験データの議論にとどまらず、神経科学や神経倫理学、医療政策を含むより包括的な議論が必要とされています。

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